黄昏時、巨大な人口谷の底から黒鉄の大蛇がゆっくりと登ってくる。機関車の至る所から吹き出した煙は紫に染まり、登り坂に喘ぐ動輪は何度も空転し火花を散らした。谷に反射する音が轟々と鳴り響き、列車は最早言葉では形容しがたい迫力を伴っていた。

この一本前の列車までは線路とほぼ同じ高さの場所で撮っていたのだが、この空を撮るのなら俯瞰しかない…と思い小高い丘に駆け上がった次第。列車が来る時間は判らず、あとは運を天に任せるのみであった。果たして、陽が沈み空が鮮やかなグラデーションを描いたその瞬間、3番積み込み線に控えていた建設8190のヘッドライトが閃と輝いた。帰り道、遅れてやってきた武者震いが止まらなかった。

(2015年12月29日 中国新疆ウイグル自治区哈密三道嶺にて)


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